イントロダクション
私たちが目指すKEEP28を社会に普及させることは、非常に長期の取り組みです。
周囲のスタッフや患者を教育し、医院のソフト・ハードを整え、データと向き合い、改善と改革を繰り返して医院を進化させていく。
そして、根拠を持って歯科医療の重要性を地域社会に伝え、企業やステークホルダーにも伝えていく。
これは患者や社会に貢献しながら、私たち自身が歯科の未来を築くことを意味します。
本セミナーの受講を通じて、医院の現在の位置を再確認し、真の患者利益を提供することができるOP医院へ歩みを共に致しましょう。
皆さんのご参加を心よりお待ちしています。
JOF理事長 畑 慎太郎
本セミナーについて
ブラッシュアップセミナー、
フォローアップセミナーとは?
オーラルフィジシャンの学びは育成セミナーを受講しただけでは終わりません。
常に良質な知見を学び、また自らの医療を振り返ることが必要です。
ブラッシュアップ、フォローアップセミナーは、オーラルフィジシャンとしての成長を継続するためにあります。
良質なインプットのための
「ブラッシュアップセミナー」
ブラッシュアップセミナーは、各分野のスペシャリストをお呼びしてご講演をいただくものです。
う蝕、歯周病をはじめとする歯科分野、またリベラルアーツとしての様々な分野の学びを提供します。
新しい知見がOPとしての歯科臨床をより豊かなものにしてくれます。
実践したことをアウトプットする
「フォローアップセミナー」
フォローアップセミナーは、自らの臨床を振り返るためのものです。
発表、グループワークをベースにOPとしての実臨床を振り返り、より良くするための考察を仲間と共に行います。
医院としての課題や解決策を共有することで、チームとしての成長を後押しします。
100症例報告とCertificate授与
オーラルフィジシャン育成セミナーではMTMに基づく診療を学んでいただきます。それを各医院で実践し、初診から再評価2までMTMに則った診療を行なった症例が100症例を超えた時点で、フォローアップセミナーにおいて発表を行なっていただきます。報告内容について検討し、適切なMTMに基づく診療が行われていると判断された場合において、JOFよりCertificateが授与されます。
Certificate授与後は、自院患者の生涯にわたる口腔健康への貢献にとどまらず、「企業・自治体との連携」「若い歯科医師の育成」「学術的発信」「一般の方への啓蒙活動」といったJOFの活動も含め、大きく社会に貢献していただけることを期待します。
オーラルフィジシャンとしての高みを目指すメルクマールとして、皆様のご参加をお待ちしております。
どのようなタイミングで発表を行うのでしょうか
MTMに基づいた診療を行なった症例が100を超えていればエントリーが可能です(再評価2まで完了した症例が10症例以上、再評価1まで完了した症例と合わせて100症例)。フォローアップセミナーに参加登録を行い、「100症例報告」希望の旨をお伝えください。2025年3月に開催される山形県酒田市日吉歯科診療所でのJOF交流会においてご発表いただきます。
オーラルフィジシャン育成セミナーの受講時期に制限はあるのでしょうか
受講時期に制限はありません。
JOFの会員でなくても報告できますか
JOF会員のみが対象です。
報告のためのフォーマットはあるのでしょうか
「100症例報告フォーマット」にてご提出いただきます(2024年4月現在準備中)。ただし、育成セミナーの受講時期により症例報告のフォーマットは異なっておりますので、必要項目が網羅されていればご自身の持つフォーマットにてご提出いただいても構いません。
どのような内容の報告でしょうか
100症例について統計用フォーマットにて分析を行い、その中で印象に残った2例(例:うまくいったケース、対応に苦慮したケース)について詳しい経過をご報告いただきます。そして、100症例を経て感じたこと(例:旧来の歯科医療とどのように違うか、MTMを定着させるためにはどうしたら良いか、必要な知識や技術はどのようなものか、何が大変か、どのような価値があるか)、そしてそこから感じた日本の歯科医療を前進させるための課題等(例:歯科医療を取り巻く状況、ステークホルダーとの関係)について考察をしていただきます。
必要な資料はどのようなものでしょうか
詳細をご報告いただく2症例につきましては再評価2まで完了している症例についてご発表いただきます。初診時、再評価2の時点における口腔内写真、レントゲン写真、歯周精密検査、う蝕リスク評価、歯周病リスク評価(歯周病新分類による評価)を、また再評価1の時点における歯周精密検査のデータ(もしあれば、口腔内写真、レントゲン写真)をご提出いただきます。治療の過程で重要と思われる部位の資料については適宜ご判断ください。統計用フォーマットについては、100症例分のデータの入力を行ない、出力される表およびグラフをご提出ください。
再評価2では口腔内写真やレントゲンの資料が必要でしょうか
初診時と再評価2の時点において変化がないと判断される場合は必要ではありません。ただし、口腔内写真においては初診時に写真上で病的部位を認めない場合であり、レントゲンにおいては硬組織の変化がないと判断した場合です。再評価2におけるサリバテストは必須ではありませんが、リスクに関するパラメーターが変化していると考えられるため、再評価2の時点でのう蝕・歯周病リスク評価も必須です。
資料の事前提出は必要でしょうか
提出された症例をセミナー時間内に精査することが困難であるため、発表1ヶ月前までの提出をお願いしております。
「オーラルフィジシャンとして認定する」という意味でのCertificateでしょうか
あくまで「MTMに基づく診療を100症例行い、その内容について適切に評価された」という意味でのCertificateとお考えください。
ブラッシュアップセミナーについて
オーラルヘルスと健康の関連を示した研究は古くからあります。
歯科医師ウェストン・プライスは、「歯科感染症が死を招く」と主張し、息子の死をきっかけに口腔慢性感染症が深刻な疾患の原因となる可能性を研究。1914年から医師たちとの共同研究で、4000羽のウサギを用いた実験で、う蝕が全身疾患に影響することを証明しました。
デンタルプラークは口腔内感染症の原因であり、さらに致命的な肺炎などの疾患を引き起こす可能性があります。この細菌集団はう蝕や歯周病だけでなく、糖尿病、脳内出血、動脈硬化、アレルギーも誘発する可能性があります。デンタルプラーク細菌を制御して健康な生活を維持することの重要性はこうした知見が明らかになるにつれ高まっています。
講師の奥田先生は『オーラル・フィジシャンとしてのスタンスを今まで以上に大切にしなければならない。歯科界全体の地盤沈下がいわれている今こそ、高齢者を含めたすべての国民のヘルスプロモーションに関わる歯科医療と、それを支える歯科医師の育成が求められている。』と話されています。
今回はオーラルヘルスプロモーションの原点とも言える口腔から始まる健康破綻とその予防の重要性について、共に考えたいと思います。
講師:奥田 克爾 先生
OKUDA Katsuji
- 東京歯科大学名誉教授、野口英世記念会理事
- 東京歯科大学を1968年に卒業
- その後、東京歯科大学微生物学講座助手、講師、助教授を経て、スウェーデン政府留学生としてカロリンスカ大学に留学
- 米国政府留学生としてニューヨーク州立大学バッファロー校歯周病学研究センターに留学
- 1989年に東京歯科大学微生物学講座教授に就任
- 厚生労働省長寿科学総合研究事業に参画(1993年より12年間)
- 国際歯科医学会日本部会、日本歯周病学会、日本細菌学会等名誉会員。日本歯科医学会会長賞受賞
抄録:悪逆非道の口腔ディスバイオーシスに立ち向かう
私たちの身体には、100兆を超える細菌が各部位にマイクロバイオームを形成して持続感染している。口腔内の700種類を超える細菌は、宿主の環境に影響を受けながら住みついている。Streptococcus mutansや嫌気性のグラム陰性の歯周病原菌が増えてマイクロバイオームのバランスが崩れると口腔ディスバイオーシスとなり、口腔感染症を発症させる。また、口腔ディスバイオーシスは腸内ディスバイオーシスにも加担して健康破綻をもたらす。
近代歯科医学の父ピエール・フォシャールは、スクロース消費が齲蝕発症をもたらすと発表していた。日本人の90%にS.mutansが潜んでおり、脳出血やがん発症リスクのあるコラーゲン結合性蛋白質を持つCnm陽性菌も成人の10-20%に検出される。摂取回数の多いスクロースは、S.mutansを毒牙にかけてバイオフィルム形成を主導して口腔ディスバイオーシスの原因になる。齲蝕予防には、S.mutansの感染予防以上にスクロースの摂取の問題が横たわっていることを認識して欲しい。
医聖ヒポクラテスは、歯周病を治療しなければ健康が回復しないことを知り、自らスケーラーを開発して歯周治療をし、その重要性を多くの弟子に説いていた。
Porphyromonas gingivalis, Fusobacterium nucleatum, Treponema denticola, Aggregatibacter actinomycetemcomitansなどは、コミュニケーションを取りながらバイオフィルムとなって口腔ディスバイオーシスもたらし、歯周病を発症させて増悪させる。多分野の研究は、口腔ディスバイオーシスが循環障害、呼吸器疾患、糖尿病、リウマチ関節炎、腎炎、皮膚疾患、妊娠トラブルに加えてアルツハイマー病の誘発と増悪に関与することを実証してきた。人類史上最大の感染症とされる歯周病の予防と治療は、口腔ディスバイオーシスに立ち向かうことである。怒涛のように入る最新情報に私見を加えて議論を交わしたい。
フォローアップセミナーについて
OP育成セミナー修了後は、学びを臨床で具体化することが不可欠です。
MTM臨床の実践は、患者の口腔健康を長期にわたって維持する鍵となりますが、臨床への適用には様々な障壁が存在します。真の患者の利益を目指す中で、時間やスタッフ、理解の不足が課題となります。これらの課題は多くのOP医院が直面しており、先人の知識がこれを克服する手助けとなります。
各医院のMTM臨床進捗や問題についてのディスカッションを通じて、より成熟したOP医院への進化の具体的な道筋を描くことができます。また、質の高い予防歯科医療を診療室に浸透させるには、継続的な学習が欠かせません。
フォローアップセミナーでは、OP育成セミナー受講後の医院でのMTM進捗を100症例達成で総論的に発表し、MTMを開始したOP医院の完成度を高めることを目下の課題とします。現在の医院の紹介、MTMを実践して現在の課題点、うまくいった点、疑問等について参加者と共に考えます。
開催内容
会場
- Fujitsu Uvance Kawasaki Tower
〒212-0014 神奈川県川崎市幸区大宮町1-5
JR川崎タワー オフィス棟