
JOFチームミーティング2025でひときわ印象的だったのが、ページデンタルクリニック(埼玉県上尾市)副院長・赤倉実里先生の発表だった。
タイトルは「女性の視点によるチームビルディングとMTMの実践」。
4人の子どもを育てながら、パートナーと共に一つの医院を運営し、MTM(メディカルトリートメントモデル)を“自分たちの形”で根づかせてきた、その歩みを語った。
■ 「なぜ病気になる前に教えてくれない?」
患者の一言が、治す医療から予防へ視点を変えた原点
赤倉先生の原点は、研修医のころに出会った患者さんの言葉だった。
「どうして、病気になる前にできることを教えてくれないの?」
その一言が、治す医療から“守る医療”へと視点を変えるきっかけになったという。
とはいえ、当時はまだ予防の実践法も、周囲に共感してくれる環境も少なかった。
オーラルフィジシャンセミナーに参加しても、
「予防は歯科衛生士がやるものでは?」という固定観念が根強く残っていた。
出産を機に一度現場を離れたが、パートナーの開業をきっかけに再び歯科へ戻り、
「自分が歯科医師として予防を担当する」と決意する。
ここから、彼女の再挑戦が始まる。

■ 院長との「価値観の対立」を乗り越え、
「予防と治療は両輪である」という結論に到達するまで
「最初の壁は、パートナーである院長との考え方の違いでした」
治療中心の院長と、予防に重きを置く自分——。
お互いの臨床観がぶつかり合う日々が続いた。
しかし赤倉先生は、繰り返される議論の末に気づく。
「予防と治療は対立するものではなく、一人の患者を支える両輪である」と。
自らが院長の治療を理解し、学び、そして歯科衛生士への橋渡し役としてチームを再設計。その結果、医院は“予防も治療も一体となった総合診療型”へと変わっていった。
赤倉先生が確立したのは、担当歯科医師である自身が患者の口腔リスクを徹底評価し、トリートメントゴールの責任を負う独自のMTMモデルだ。
「MTMが院の幹となり、そこに院長の治療や歯科衛生士のケアが枝葉のようにつながっていく」——その言葉どおり、今のページデンタルクリニックは一本の大樹のように成長している。

■ 離職ゼロを目指す。子育て世代スタッフ9割の医院で、
「ご迷惑をおかけします」を「ありがとう」に変えたチーム文化
チーム再構築の鍵となったのは、“制度”ではなく“安心感”だった。
スタッフの9割が未就学児を育てる母親。仕事・家事・育児が重なり合うなかで、継続できる職場をどう作るか。
赤倉先生はまず、「ご迷惑をおかけします」という言葉を院内で使わず、「ありがとうございます」と言い換えるルールを作った。
休むことを“申し訳ない”ではなく、“支え合えることに感謝する”文化へ。
柔軟な業務体制を導入し、誰が休んでもカバーできる仕組みを整備。
さらに、動画コミュニティーを活用した情報共有で、休んだスタッフもスムーズに復帰できる環境を整えた。
「母親が安心して働ける医院は、患者さんにとっても安心できる医院になる」
そう信じて、一つ一つの仕組みを形にしてきた赤倉先生。その歩みは、家庭と仕事の調和を実現し、質の高い医療を提供する、新しいファミリー経営のモデルケースとして、今後ますます注目を集めるに違いない。

執筆:JOF事務局/伊藤