オーラルフィジシャン(OP)育成セミナー
― 2004年より続く、予防型歯科医療の実践プログラム ―

オーラルフィジシャン(Oral PhysicianOP)とは、患者さんの一生を見据え、口腔の健康を守るための“設計士”のような役割を担う新しいタイプの歯科医師です。
従来の「壊れた部分を修理する」歯科医療から一歩進み、むし歯や歯周病など予防可能な疾患のリスクを把握し、発症前から介入することで、長期的な口腔の健康を守る医療を実践します。

しかし現実の臨床現場では、時間や経営上の制約から「とりあえず噛めるようにする」という短期的な処置に追われ、患者教育や本来必要とされる医療の提供が難しくなっているケースも少なくありません。
こうした状況を変えるためには、診療技術だけでなく、患者さんと長期的な信頼関係を築く診療システムが不可欠です。

本セミナーは、2004年の開講以来、メディカルトリートメントモデル(MTM)に基づく診療システムを体系的に学び、臨床現場で実践できる歯科医師を育成してきました。
初診から患者教育、初期治療、再評価、そして個々のリスクに応じたメンテナンスまで、患者さんのライフステージに寄り添う一連の診療の流れを、理論と実習の両面から習得します。

OPとしての姿勢と技術を身につけることで、診療体制の効率化だけでなく、患者さんが本当に必要とする医療を提供できる歯科医院づくりを目指します。

 

77期抄録

 

67() 77期育成セミナー趣旨説明

Oral Physicianという選択

〜理想と現実のあいだで悩む臨床家のためのヒント

理事長・講師:畑慎太郎

抄録:寿命が延び続ける現代において、歯科医療には「治療を重ねているにもかかわらず、なぜ歯は失われ続けるのか」という根源的な問いが突きつけられています。予防中心型歯科医療の重要性はすでに共有されつつありますが、制度・時間・経営・患者理解、そしてスタッフを含めた組織の抵抗によって、その実装は容易ではありません。

本講演では、Oral Physicianという考え方を軸に、

  • なぜ予防は大切なのに進まないのか

  • 理想論が現場で空転してしまう構造的理由

  • 変えられない制度と変えられる組織の切り分け

を整理します。あわせて、アップルデンタルセンターにおける予防導入初期の失敗、スタッフの反発や混乱、試行錯誤の過程を包み隠さず共有し、「きれいな成功例」ではなく、現実の臨床家が再現可能な変革のプロセスを提示します。本講演は、日々の診療に違和感を覚えながらも、より良い歯科医療を模索している先生方に向けた、現場目線の導入講演です。

 

67() 初期治療講義

効果的な初期治療へと変えていく視点

講師:杜塚美千代

抄録:初期治療は、メディカルトリートメントモデル(MTM)の要であり、その質は修復補綴治療やメインテナンスの成否を大きく左右します。多くの医院では、教科書通りのフローを導入するものの、次第に「やっているが、効いていない」状態に陥ります。

その原因は、技術不足ではなく、

  • 患者ごとのリスクや背景が十分に反映されていない

  • 初期治療後の再評価が数値の確認作業で終わっている

  • チーム内で初期治療の意味が共有されていない

といった問題にあります。

本講演では、初期治療の質を高めるための考え方を3つのステップで整理し、

  • 初期治療を患者ごとにどう考え直すか

  • 再評価で何を見て、どう判断するか

  • MTMが形だけにならないための工夫

を、実際の臨床と組織運用の両面から解説します。MTMを始めたばかりの方にも、長く取り組んでいる方にも、明日からの臨床で試せる視点を持ち帰っていただくことを目的としています。

 

6月7日() 口腔内写真・X線写真・唾液検査・歯周組織検査実習

メインテナンスプログラムの設計〜数値・リスク・人をどう統合するか

講師:花岡佑み子

抄録:メインテナンスは、患者の健康を長期的に支えるための欠かせないフェーズです。しかし現場では、治療終了後にそのまま画一的なメインテナンスへ移行してしまうケースも少なくありません。本講演では、治療終了後の再評価を起点に、

  • 初診時からの変化をどう読み取るか

  • 数値指標・リスクファクター・パーソナルファクターをどう統合するか

  • メインテナンス間隔をどう考え、どう説明するか

を整理します。また、実際の臨床動画を用いて、限られた時間の中で何をやり、何をやらないかという判断軸も具体的に解説します。メインテナンスをルーティンワークから、医院の価値を支える中心的な存在へと再定義する講演です。

 

68() 医院全体で根付かせるMTM

科衛生士と受付が変革の当事者になるために

講師:相澤紀花 和田由希

抄録:MTMは、歯科医師や歯科衛生士だけで完結する医療ではありません。受付を含めたチーム全体が同じ物語を共有して初めて機能する医療モデルです。

本講演では、歯科衛生士と受付スタッフが、

  • 初診時に何を伝え、何を受け止めているのか

  • 院長の方針を、医院の考え方をどのように患者に翻訳しているのか

  • 組織が変わる過程で、どのように悩み、役割を見つけてきたのか

を、変革を経験した当事者としての視点から語ります。

実際に使用しているチェックリスト、問診票、説明資料を共有しながら、完成された理想像ではなく、試行錯誤を重ねながら組織が変わっていったプロセスを提示します。

同行スタッフにとっては自分たちにもできるという確信を、院長にとっては人が変わっても、理念が残り、医院が回り続ける組織づくりのヒントを得られる講演です。

 

68() グループディスカッション趣旨説明

MTM の実践と定着に向けた課題共有と解決策の模索

チューター:宮城和彦

抄録:MTM の概念や基本手技を学んだとしても、実際の臨床におけるシステムの定着に
は依然として多くの課題が存在します。患者の行動変容を促すコミュニケーション、
リコール率の維持、そして医院全体での規格性のある診療体制の構築など、直面す
る壁は多岐にわたります。
本セッションでは、講義で得た知識を「自院でどう活かすか」に焦点を当て、グ
ループディスカッションを行います。参加者同士が各医院での成功事例や、現在進
行形の悩みを共有することで、単独では気づくことのできなかった新たな視点や解
決策を見出すことを目的とします。
他院のリアルな取り組みを知ることは、明日からの臨床を変える大きな原動力とな
ります。知識をインプットするだけでなく、具体的なアクションプランへと昇華させるための、活発な意見交換の場となることを期待しています。


1024()25 () 19回オーラル・フィジシャンチームミーティング

77期育成セミナー中間発表の趣旨

近年、メンテナンスを実施する歯科医院は増加していますが、う蝕や歯周病の再発、セルフケアの停滞といった課題は依然として多く残っています。その一因として、初期治療が処置対応に偏り、治療を通じた患者の理解や行動の変化を十分に振り返る機会が確保されていないという現状があると考えられます。

MTMにおける初期治療から再評価1の段階は、単なる経過確認ではなく、
・リスク評価は妥当であったのか
・患者の理解やセルフケアに変化はあったのか
・医療者側の介入は適切であったのか
といった点を整理し、再検証するための重要なプロセスです。

本中間発表では、自院の取り組みをあらためて振り返り、「なぜその対応を行ったのか」「そこから何が見えてきたのか」を言語化することで、酒田交流会での発表につなげるための準備とします。

2027328日(土)・29日(日) 酒田交流会

77期育成セミナー最終発表の趣旨

中間発表から約5か月を経た本発表では、再評価2を含むデータをもとに、自院におけるMTMの実践を総括します。初期治療から再評価1で整理した課題に対して、どのような介入を行い、その結果、患者および医院にどのような変化が生じたのかを検証します。

本発表の場は、オーラルフィジシャンの原点である日吉歯科診療所であり、熊谷崇先生の前で自らの実践を報告する機会となります。単なる成果報告にとどまらず、
・医院として何を大切にしてきたのか
・その実践が地域にどのような影響を及ぼしているのか
・現在の歯科医療をどのような視座で捉えるべきか
についても考察します。

MTMの実践を通じて見えてきた、医院と地域、そして歯科医療の現在地について共有することを本発表の目的とします。

77期育成セミナースケジュールで行われます。

日程は以下の通りと理解しています。

・第1回:67日(日)・68日(月)〔懇親会あり〕

・第2回:726日(日)〔ウェブ開催〕

・第3回:1024日(土)<中間発表>〔懇親会あり〕

   + 1024日午後~25()19回チームミーティング参加

・第4回:328日(土)・29日(日) <最終発表>交流会参加〔懇親会あり〕

77OP育成セミナー参加費

・医院参加費用(3人まで)600,000円、1人追加120,000

・個人参加費用 200,000円