予防歯科の社会啓発から連携へ

歯科医師の皆さん診療室から飛び出しさまざまな活動をしましょう!

JOFの存在意義とは教育と社会連携にあります。その社会連携においてプランニングディレクターを拝命しました。具体的に社会連携とは、企業連携・地域連携・オーラルヘルスリサーチの三つからなっています。

まず一つめの企業連携ですが口腔の健康に興味を持っていただいた企業向けに予防歯科についての講話等を通じてその企業の健康経営、社員やご家族の健康に寄与をすることです。

今までの実績は2019年から2020年にかけて蒲田の富士通ソリューションスクエア、品川オフィス、東北支社、そして2021年の全社向けオンラインセミナーなどです。 また富士通社員の歯科健診の受けいれはもちろんのこと、歯科受診の受けいれも始めてまいりました。内容としては「令和時代の予防歯科」というタイトルで、かしこい歯科受診の方法、むし歯(う蝕)・歯周病の病因論、 セルフケアの方法などを実症例を交えて、社員の方にわかりやすい言葉で伝えてきました。また全社向けオンラインセミナーにおいては富士通の健保組合および健康推進本部のご協力により、約3,000名の方に聞いていただくことができました。

今後、健康経営を始めたいという企業の方にJOFが窓口となり、このような実例を紹介することで社会に広がっていくのではないかと思います。また歯科検診に関しては単なるむし歯(う蝕)や歯周病の疾病の発見だけでなく、どのような情報提供をすると今後の健康行動に結びつくのか企業の皆さまと議論を深めていきたいと思います。地域連携に関しては地方の中小企業あるいは協会けんぽ、各自治体あるいは国保連合会などと連携し同様の取りくみをしたいと思います。

オーラルヘルスリサーチに関しては、オーラルフィジシャン診療室で持っているデータと健保組合をはじめとする保険者の持っているレセプトデータと結びつけることで、口腔の健康と全身の健康の関係も明らかになっていくことが期待できます。オーラルフィジシャン診療室の皆さまもぜひこの取りくみに参加していただきたいと思います。またこれからオーラルフィジシャン診療室を目ざす方々には、ベリフィケーションクラブという部署をJOF内に立ち上げます。 これはオーラルヘルスリサーチの入門編に位置するものです。ここでは忙しい臨床現場の中で、どの項目からデータを集める準備をしていけばいいのかを歯科医師および歯科衛生士・アシスタントの方々にお伝えしていきます。このベリフィケーションクラブにおいては、多数の診療室から歯科疾患の実態調査ができれば、厚労省の発表する調査と比べ、臨床的により役立つ情報が集められるかと思います。

この取りくみの先にあるのは歯科を通してさまざまなステークホルダーの方々(大学・学会・歯科メーカー・歯科医師会・マスコミなど)にていねいな説明と数字の力を用いて歯科業界が取りくむべき方向を提言することになります。問題点はステークホルダーが一つの目標に向かわずにそれぞれが場あたり的な取りくみをしていることです。企業と連携することにより一つの大きな目標に向けて社会に提言する組織をになうのがJOFです。もう一つの問題点は歯科にかかりながら口腔の健康をそこねている人々が少なからずいることです。この問題を解決するためには、歯科医療の本質的なあり方、つまり一般生活者がどのように歯科医院を利用すると生涯自分の歯で健康に過ごせるかをより広く知ってもらうことです。

歯科医師の皆さん!時として診療室から飛び出してさまざまな活動をしませんか。わたしたちが提供できる歯科医療は、想像よりも広義で魅力的なものなのです。

Planning director 畑慎太郎